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景色も行先も自由な列車の旅へ

ダイアログ・イン・ザ・ダーク アテンド ぐっち

 私の旅の原点は、中学2年生の冬にさかのぼります。
 当時東京の学校に通っていた私は、実家のある神戸に帰省する度にいつも新幹線に乗っていました。
でもその冬は違いました。鉄道好きな方ならきっと一度は使ったことのある切符。そう、青春18切符で初めて実家まで帰省したのです。
 青春18切符とは、JRの普通列車や快速列車が乗り放題の切符のことです。もちろん新幹線は使えません。東京から鈍行列車を乗り継いで、10時間かけて神戸まで帰ったのです。
 今振り返れば、初めての一人での列車旅にしてはかなり壮大なことをしたなあと思います。東京駅の東海道線のホームまで親戚の人に見送りに来てもらい、長い一人旅が始まりました。
「ほんとに今日中に神戸まで帰れるんだろうか」
「乗り換えの駅で迷子になったらどうしよう」
そんなことばかり考えながら、「対話の森」がある浜松町の辺りを通ったのを今でも覚えています。もちろんその時にはまだ「対話の森」は、影も形もありませんでしたが。
 しかし不思議なもので、列車に揺られていると少しずつその緊張がほぐれていきました。小田原を過ぎる頃には
「この辺りからそろそろ海が見え始める頃かな」
とか、静岡県に入ると
「この辺にはきっと茶畑が広がっているんだろうな」
などと、車窓の景色を想像する楽しみを見つけました。そして
「今日は天気がいいから富士山がきれいに見えているはずだ」
と思った瞬間、本当にそこで富士山がきれいに見えているかの答え合わせは必要ないと気づきました。
だって想像の景色は自由なのですから。
写真に撮ることができないからこそ、いつまでも記憶の中に残っている風景がきっと皆さんの中にもあるのではないでしょうか。
20年近く経った今でも富士山と聞いて私がイメージするのは、その時に想像した晴天の中にそびえ立つ雄大な姿です。
 初めての一人での列車旅は順調に進み、無事神戸まで帰り着くことができました。滋賀県に入った頃から周囲の人々の方言が関西弁に変わったのを聴き、達成感と安心感が同時にこみあげてきたのを今でも覚えています。
 その時の経験から列車の旅に魅了され、20年が経とうとする今、暗闇の列車の旅へと皆様をご案内する側になりました。
 暗闇の中を走るのはキハ40というディーゼルカー。私もこれまで旅先で何度も出会った思い出の車両です。
暗闇だからこそ、車窓の景色も自由自在。皆様お一人お一人の目には、今どんな風景が見えていますか?

答え合わせのいらない自由な暗闇の列車の旅へ、さあ出発進行!

暗闇の中の電車に乗って 出かけてみよう! キハ40で春の旅。
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/event/20240316-0630/


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