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しらしょー 13歳の自分へ


突然環境がガラッと変わった

中1の秋くらいに突然体調が悪くなったんです。倦怠感とか吐き気が続くようになり、斜視になって、物が霞んで見えるようになりました。小学校の頃から習い事でテニスをしていたので、中学でもテニス部に入部したんです。ある日、試合に向けてユニフォームの採寸をしに、更衣室へ向かおうとしたとき、突然景色が二重に見えて、目をこすっても見え方が変わらない。どうしたんだろうなって。

いくつも病院を転々としたけれど、原因は分からなかった。だけど友達のお父さんがたまたま眼科の先生で、その縁で病院を紹介してくれたんです。それで検査入院することができて。そして結果から言うと、小児がん、悪性リンパ腫だということが分かりました。

転院を経て、治療に専念する病院に入ることができたのだけど、そのために一旦地元の中学を離れて院内学級に移らなくてはいけなくなったんです。でもすっごく環境がガラッと変わるから、どうしてもそこには通いたくなかった。その当時は物理的に教室の目の前の廊下を避けて通るくらい、「ここには絶対に通わないんだ」っていう強い気持ちがありました。

囚われのキミ、キャストのしらしょー
ダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドとして、
また「囚われのキミは、」でキャストとして活躍するしらしょー

「落語、聞いてみたら?」

院内学級の担任は数学の先生でした。僕の目が見えにくくなっているのも、ちゃんと知っていてくれて。それで目を使わなくても、楽しめる物がないかって、色々考えてくれたんです。それである日、「落語を聞いてみたら?」と声をかけてくれたんです。その先生が落語が好きだったから。そこから学校との接点が少しずつできてきて…今思えば、してやられたと思うんです。でも、そのお陰で、嫌なところじゃないかもしれない、行ってみようかな、っていう気持ちに変わっていって、院内学級に通えるようになったんです。

その先生は趣味でマジックとか、ジャグリングをする人だったんですけど、同じような感じで、マジックも教えてもらいました。電話でできるテレパシーマジックっていう物なんですけど、入院先から自分の実家の母親に電話を繋いで、トランプのカードを当てるっていうやつ。それをきっかけに、マジックという世界にもハマっていって。実は、何かあった時に披露できる小ネタをいくつか持ってるんです。それで、「囚われのキミは、」でのパフォーマンスでも披露してたりします。その先生は、退院して復学するタイミングでも色々と尽力してくれました。

「囚われのキミは、」キャストのみこえちゃんとしらしょー
「囚われのキミは、」キャストのみこえちゃんと。

「思いもよらない方向に行っても、不安にならなくていいよ」

人生って本当にどうなるか分からなくて。だから13歳の自分に言えることがあるとしたら、「色んな人に出会って、その結果思いもよらない方向に行くこともあるかもしれないけれど、不安にならなくていいよ。」って伝えたいです。

物を作るのが好きだったから、大学では建築とか、そういうことを勉強してみたかった。だけど図面を書くのは絶対できないということが分かり…。

でも高校の頃にユニバーサルデザインという言葉に出会い、福祉という切り口で学ぶのも良いかなと思って、大学では福祉を専攻しました。そういう色々な出会いがあって、決まったレールじゃないというか、偶然が重なってできた道を進んできたけれど、でもそれを振り返ってみると、悪い選択肢じゃなかったなって思えるんです。

どうしても誰かと比べちゃったりすることもあるし、もどかしい時もあるけれど、まだまだ可能性はあるし、昔の自分と比べると、自分なりにすごく楽しめてるんじゃないかな。思いがけず一人暮らしも始めたし。

「囚われのキミは、」でしらしょーに会えたら、得意のマジックを観れるかも?

「学ぶことの唯一の方法は、遭遇すること」

ちなみに、中学の頃であった院内学級の先生とは、今でも繋がりがあるんです。年に1回はパルコ劇場で一緒に落語を見たり。今は大学で教えながら病弱研究というのをされているので、僕もパネラーとして当時のことを話したりしたこともあります。生徒側の立場から、こうやって振り返ってみると、先生の仕事は、子どもの人生に寄り添う仕事、価値観だったり、影響を与える存在なんだなって。特別支援学校とかは、マンツーマンに近い形が多いから、特に出会うってことがキーになってたりする。

だからダイアログの礎になっている、哲学者のマルティン・ブーバーの「学ぶことの唯一の方法は、遭遇すること」っていう言葉が、僕は気に入ってるんです。算数とか数学って、先生の教え方が上手じゃなくて嫌いな人が多い気がしてるんです。科目の好き嫌いもあるかもしれないけれど、それに携わる人の印象が大きく影響しているんじゃないかなって。

そう思うと、ダイアログ・イン・ザ・ダークも同じですよね。アテンドが良かったから、暗闇の世界も良かったって思ってもらえるかもしれないし。「とらきみ」(リアル対話ゲームⅡ「囚われのキミは、」の略称)は、もっと自分のキャラクターが体験全体の印象を占めている割合が多いかも。だからどれだけ自分のパフォーマンスとか、エンターテイナーとして爪痕を残せるかっていうのは、すごく大事にしていきたいなと思っています。


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